伝えたい言葉なんてない

昔詠んだ歌、今詠む歌

君の香を

君の香を 降り込めたのか 今朝の雨 指先の露 いとおしく見ゆ

いくたびか 破れ落ちたる 堪忍袋 言葉紡いで 縫い直す今

流れゆく 命の河の うたかたに 我の名を呼ぶ 我も名を呼ぶ

軒叩く 遣らずの雨に まぎれては 名残りの蝉の 恋果つる夏

想い出の カケラ集めて はめてゆく 指に刺さりし 棘も抜かずに

月の夜は 疲れ 憑かれて 突かれて踊る はらりと落ちた後れ毛に 汗

婆ちゃんと  呼んでくれるな  我が母を  孫の重さも  知らずに逝くのに

辛いという字 何かを足したら 幸せに なれそうな気がする そんな朝