伝えたい言葉なんてない

昔詠んだ歌、今詠む歌

未満月

水かきの あったあたりが 触れ合って 魚になろうと 君とうなづく

バレッタを 外す手首を握り締め 何を急くのか 夏の海風

足りないと もういらないを繰り返し 午後の日射しは 緩く翳りぬ

真っ直ぐに 生きられないのは 背に残る 翼の痕が 不揃いなのね

真夜中の 空を斬り裂く稲妻に 焦がれる如く 我が腕を抱く

つり革の 見知らぬ男の 指を見る 日焼け残りの 白い輪の跡

仰ぎ見る 夜空に冴える 未満月 ゆがんだカタチを いとしいと思う