伝えたい言葉なんてない

昔詠んだ歌、今詠む歌

2013-01-01から1年間の記事一覧

荷をひとつ 降ろそうと決め いつもより すこし 長めの湯に居る

続・武器

「こうすべき」という縄に縛られ 矢に射抜かれ息が止まるからその言葉を使う人に怯える ハウツーもののブログタイトルに「●●のためにあなたがすべき5つのこと」「読んでおくべき本ベスト5」とかあるだけで、うへっと思う(^_^;)

武器(五行歌)

会ったこともない他人の日常が武器となるネットという妖かし

神無月逝く

可も不可も 幸も不幸も ありませぬ 笛吹きながら 神無月逝く

半分は嘘

大丈夫と 言いし君の 半分は嘘 大丈夫と 答えし我の 半分も嘘 珈琲の 余韻残れる 唇に 触れた小指の 冷たさは秋 あてのない 舟旅ならば 月の夜 櫂を流して ほどく黒髪 履き慣れぬ ガラスの靴を 脱ぎ捨てて 発車間際の 終電に乗る 欲しいのは 龍宮城の玉手箱 …

馬鹿の皮(五行歌)

次を剥いたらリコウが出てくるかと玉ねぎのようにバカの皮を剥く 鬼になったあとひとつ息を吐いて鏡に向かう紅筆の先から女が入ってくる めちゃくちゃに壊れてしまいたいと思う一方で堅固な鎧を着る

気持ち的に返歌

id:saara85 さんの「どす黒い想い。 」に掲載された歌に、気持ち的に(技術的にということではなく)返歌。 切り裂いた 腹から吾子を取り出して 救われし我 暗黒の血 迷うという自由はなかったのだ。 医師はそれが当然のように、腹の子を殺し、私を救った。 …

いつか一緒に

空駆ける 翼ないこと 悔しくて 肩甲骨に爪を立ててる 遠き街 君の泣き声 風の音 鼓膜の奥で絶え間なく鳴る 看取られて 逝く日のなき身の 淋しさと 心軽さを 風よ さらえよ 西行と 並ぶ 我が身のおこがまし 花の下にて 眠りたきとは 吾(わ)も友も 修羅の道…

騒ぐ胸

来る人が みんなあなたに見えるのは 私の視力が落ちたせいなの? わからない 明日ならいっそ そのままで 緑の帽子で スナフキンになる 覗き込む カップに揺れる 深緑に 見え隠れする 夜叉のくちびる あなたから 逢いたいの言葉 聞きたくて 左の耳を空けてあ…

測る秤の

【春に詠んだうた】 どうしてと あなたは尋ねる どうしてと 私は応える 春雷が鳴る さよならを 告げようとした くちびるを 不意にふさいだ 花のひとひら 朽ちるなら 風のない夜に 君の身を 散り染めたしと 思う春宵 【ほか】 心には たったひとつの 弾ありて…

数珠を持つ

【今年の正月開けに詠んだうた】 正月の めでたさもなく 朝は来て 晴れたる空に 真白き富士見る かしわ手も 垂れるコウベも 持たずして 不死の高嶺に 撃つ指鉄砲 数珠を持つ 指も冷たい 法要に 遺影の父は 夏姿で笑む 【アルジェリア人質事件の際に】 この世…

修羅の血は

何もかも とりあえずという 棚に上げ とりあえず生き とりあえず食う 空を見る 足元を見る 前を見る こぶしを握る 夏雲が湧く むせかえる 金木犀の花の香に 肩甲骨のあたりで嫉妬 次の春 その次の春は 誰がいて 誰がいないか おそろしきこと 目覚めたら 夢で…

藍より出でて

飛び上がるほどの大声 母を恥じ 恥じる私を さらに恥じ入る 君と飲む 300円の珈琲を 極上と思う 今日はいい日だ 我が胸に 巣食う魔物に杯を挙げ 今後もよろしく お手やわらかに 君の言う 大丈夫だよの その中に 滲む真実 潜んでいる嘘 握り締め 我が手に残っ…

君の香を

君の香を 降り込めたのか 今朝の雨 指先の露 いとおしく見ゆ いくたびか 破れ落ちたる 堪忍袋 言葉紡いで 縫い直す今 流れゆく 命の河の うたかたに 我の名を呼ぶ 我も名を呼ぶ 軒叩く 遣らずの雨に まぎれては 名残りの蝉の 恋果つる夏 想い出の カケラ集め…

蝉時雨

もう誰も 知る顔のない 町はずれ かしげた日傘に 降る蝉時雨 懐かしい 恋の名残は 歌の中 ドーナツ盤の回転の中 静脈に 映す炎の 緋の色で 君を溶かすか 我が融けるか 汗ばんだ 肌を這うのは 風の指 紅を拭うは 雨のくちびる 黙ってると 発狂しそうで 怖いか…

未満月

水かきの あったあたりが 触れ合って 魚になろうと 君とうなづく バレッタを 外す手首を握り締め 何を急くのか 夏の海風 足りないと もういらないを繰り返し 午後の日射しは 緩く翳りぬ 真っ直ぐに 生きられないのは 背に残る 翼の痕が 不揃いなのね 真夜中…

サラダ記念日も知らなかった

心が凍っていた10数年があった。 きっとこのまま死ぬのだ、と思った。 でも。 ある日、見知らぬ人の歌が、私の胸の扉を叩いた。 三十一の文字。 夢のかかと ~私がヘタな歌を詠む理由~ 「ななしのかかし」より サラダ記念日も、読んだことのなかった私。 真…